農業女性、デザインを学ぶ!

 デザインするというのは、特別な考え方をするとかそういう技術を持つ人だけができるとかいったものではなくて、人が何かをもっと心地よくしようと工夫することがすべてデザインである。

 しかしどんなことも同じと思うのだが、欲しい心地よさを形にするのにはその理論や技法・技術をいくらか覚えておくと効率よく、さらに効果的に実現できたりする。デザインはアートではなく目標達成のための技術なので、使う色や形、工程ひとつひとつに必然性がある。

 今年の春、千歳・恵庭エリアの農業女性たちがデザインを学び始めた。丹精した作物の販売所に自らの思いを込めたポスターやチラシやプライスカード を置きたいし、作物を買ってくれる人々に情報発信もしたい。そのための技術をもっと学びたいと求めて、初めて研修会が開かれた。

 これまで必要なことが伝わればよしとしていたのが、もっと明確に強く伝えられないだろうか、伝える機能に伝わるときの心地よさをプラスできないだ ろうかと、ツールの質を高めたい段階にいたって実際に学ぶ場を作ったというのが、私はすごいと思った。そういう女性たちだから学ぶのに実に貪欲である。実 習も懸命に取り組み、質問も多く予定の時間ではまったく足りなかった。なので、来月また研修会は開かれる。今回は管内全域から受講者が集まるそうだ。

 意欲の人たちには教えるこちらも真剣。長い経験で得た必然のデザインとスキルのうち、すぐ使えるエッセンスをダイレクトに教えてしまう。だって、 彼女らに試行錯誤の時間を使わせるのは惜しい。安全で美味しい優れた作物を作るのに苦労した分、商品情報と生産者としての思いを上手に消費者に伝え、バリ バリ売ってほしいと、ささやかながら私も農業の役に立ちたいのである。

佐山さつき