ティマルにて1

 ティマルはニュージーランド南島、花の観光都市クライストチャーチの南へ約百キロ、ちょうど島のウエストがくびれたように見えるあたりにある。人も空気も穏やかな市だ。

 「ベイヒルプラザ」という高台の展望スポットからはティマル港とキャロラインベイを一望でき、長い階段を降りると(もちろん空中エレベーターもあ る!)トレバー・グリフィス・ローズガーデンだ。グリフィス氏は、オールドローズとイングリッシュローズの普及につとめてきたバラの育種家。すでに高齢の 氏が丹念に集めたオールドローズ五百二十九種とデビッド・オースティン氏のバラとの千二百種を、永く守り、誰もが楽しめる庭園であるようプランされ、ティ マル市と美化協会が二〇〇一年十二月にオープンさせた。

 驚いたのは、二千万円ものローズガーデンの造園資金がどこから出たかということである。ティマル市長夫人ナンさんは、市の美化協会代表でもあり、 このテーマガーデンをつくるための寄付と協力集めに奔走し、市を動かした。実際、そのためには夫である市長とずいぶん闘ったと、茶目っ気たっぷりに話され ていた。その後も、美化協会メンバーたちとガーデン充実の資金集めに料理レシピ集を発行・発売するなど、積極的にボランティア活動している。

 ガーデンのテーマもすてきだし、行政と渡り合うことをいとわぬ熱意も半端ではないし、それにこたえ、「やってやる」ではなく協働のプロジェクトであるとして真正面から受けとめる側もなかなか。市民と行政の成熟した関係が見える。

 そして、四万二千人の小さな市のローズガーデンは、今や南カンタベリーエリアの有名スポットとして、多くの見学者が訪れるようになった。

佐山さつき