ティマルにて2

 ニュージーランドの教育制度はとてもユニークに見える。各学校の教育手法設定の自由度が高く、住民や生徒たちには多彩な学びの選択肢が用意されているのに驚く。

 ティマル・マウンテンビュー・ハイスクールは公立の、中高一貫校。必須科目のほか語学、工業技術、農業、食品・栄養学、アウトドア、アート、デザ イン、音楽、木工、パソコンなど自由選択できる科目が多い。ここで興味や適性に合う進路を見つけ、大学や専門学校に進む準備もできる。

 各クラス(ホーム)は学年毎に分けられるのではなく、各学年の生徒が一緒に所属する。年長者が低学年生徒を助けるなど、社会性を身につけられる手 法と家族的な雰囲気。施設はぜいたくな建築ではないが、広い芝の校庭や技術科の作業機械設備、飼育体験のミニ牧場や農場など、人が人らしく生きるための知 識と知恵と技術を体得させようという配慮を随所に感じる。舞台芸術の授業に使われる本格的な機材設備のアートホールにも驚かされた。

 生徒もすがすがしい表情。声をかけるとまっすぐ反応が返る。能面のような顔は、ない。

 私には、いま日本のおとなが、自立できない子どもを育てようとばかりしているように見える。教育もまずは、子どもたちがどんな時代にあっても自力 で自分らしく生き延び、生を楽しむ術を身につけさせることだと考えている。親がかりでケイタイメールに没入する若者らや、応用力のないゲーム脳の子どもた ちがいやいや学校に通い社会に出て行く時が来るのを想像すると、とても怖い。

 こういう学校には、留学さ せられるなら中学生のうちにと思う。もちろん、私たちのまちにそういう学校があればもっといい。

 ティマルの学校にて、大きく伸びをしながら、こういう学校で学べるのなら、私ももう一度子どもに戻ってみてもいいなと、思ったのだった。

佐山さつき