ティマルにて3

 先に、人口四万二千人のティマル市で、トレバー・グリフィス・ローズガーデン開設のために約二千万円もの寄付金が集められたと書いた。例えば私の住む恵庭市で、公共施設のために、そんなに多くの寄付を集められるものだろうか。

 ニュージーランドは社会福祉制度が充実しているので、老後のためせっせと蓄財に励む必要がないのかもしれない。さらに、この国の政財界の清潔さは 世界有数であり、政治・行政への不信感が少ない、つまり差し出したお金の行方に不安がないというのも理由のひとつか。もしくは住民がそれらをしっかり把握 できるからか。

 まちの景観維持に限らず、学校充実のための寄付や運営協力など、お金持ちが個人の財力をどう使うかのモデルをいくつも見たような気がする。

 ティマル・ボーイズ・ハイスクールは伝統ある公立男子校。卒業生も家族も学校をとても誇りに思っていて、だからせっせと寄付をする。そのお金でさ らに教育体制を整えられる。そして生徒もそこで学ぶことを誇りに思う。誇りを胸に一生懸命学び学校生活を楽しむ。そして卒業生がまた学校を守るという連 鎖。この「学校」を「まち」に置き換えてもいい。

 口が悪い私は、「金持ちが貯め込むのは醜悪、自分の子供だけのため貯めるのは最悪」と思い、実際そう言う。自分の家族を含むまちのためにお金を使えるようになりたいものだと思う。

 先日、口は悪いが心ある人が、高齢者たちに、「年金から少し子どもたちの本のために。老人には後がないが子どもたちにはある。」とやって皆どっと笑った。ギリギリの生活をしている母が、そうだねと共感しているのが印象的だった。

佐山さつき