事務用品売り場にて

 オフィス用のカレンダーを買うのに札幌の事務用品店に出かけた。それはデザイン用品を扱う店以外ではなかなか手に入らない。デザインが格別だとい うわけではなく、サイズがバカでかく玉(カレンダーの数字をタマと言う)も大きく、書体はデザイン学校の生徒が一番初めに学ぶ視認性の良いヘルベチカで、 部屋のどこからでも全員でひとつのカレンダーを見ながら話せる便利さに慣れてしまうと、もう別のものに変えられないというだけの選択。しかし、考えてみる とデザインオフィスでは昔からこれを使っているところが多く、なぜか業界の定番となっている。

 業界の定番は他にいくつもあり、印刷色指定チャートやインクのカラーチャートは専門用品だが、一般事務用品の中でも、先がつぶれにくいサインペン や校正に使う赤ペン、黒々と太字でなめらかに書けるボールペンなど、使った中で良いものはクチコミで広がり、私たちの定番となっていく。別に高価なもので はなく定価百円のサインペンであり、百円のボールペンである。新製品が出ると、誰かがとっとと試して具合の良くないものはステ。実際に捨てるわけではない が、買ってしまったとしても一度限りでさようなら。名刺ホルダーはこれ、ステープラーはあれ、定規はそれ。仕事は時間との戦いで、したいことにすぐこたえ てくれる使いやすさは重要だ。

 こういう、事務用品ハードユーザーの定番品をそろえるコーナーが身近にあったらと、いつも考える。自分たちが心地良く長く使っているものは多くの 人に使いやすいだろうとも思う。愛用品を選択できるところまで、みな、なかなか辿り着けないでいるのだろうから。また、それが商品開発者側へのメッセージ ともなりそうである。

佐山さつき